NHK証言拒絶事件 平成18103日最高裁第三小法廷決定 

平成18年(許)第19

【事件の概要】

 美容・健康商品を製造・販売する日本のA社が所得隠しをして、米国内の関連会社に

その利益が送金されたと平成9NHKが報道し、そのニュースが日米国内のメディア

にも報道された。A社の米国内関連会社は、米国国税当局の職員が、虚偽の情報を日本の

国税職員に漏洩し、日本の国税職員が情報源となって一連の報道がされ、その報道の

ために同社は損害を被ったとして、米国政府を被告として損害賠償請求の訴訟を提起した。

 その訴訟に必要な証拠として、NHK記者を証人尋問し、NHK記者の取材源は誰かを

特定しようとするため、米国の裁判所を通じて日本の裁判所に証人尋問が嘱託された。

しかし、NHK記者は、取材源の特定に関する質問事項については、民事訴訟法197条に

規定された職業上の秘密にあたるとして、証言を拒絶した。最高裁は、証言拒絶には

正当な理由があると認めた。

【判決の要旨】

 憲法では報道の自由が保障されている。報道の自由は、国民の知る権利に答え、

国民の主権者としての意思形成に寄与する重要な権利である。しかし、記者が報道の

元になった取材源が誰であるかを証言しなければならないとしたら、取材源となる人は

記者に情報を流すのをためらってしまい、その結果公共の利益に関する自由な報道が

行われなくなるおそれがある。一方では、取材源が明らかになることによって守られる

重要な権利がある場合がある。取材源を隠すことによって守られる報道の自由と、取材

源を明らかにすることによって守られる権利・利益とを比較して、この事件の場合は、

最高裁は取材源を秘匿することによって守られる報道の自由の方を優先した。

【各裁判官の判断】

この判決は、那須弘平裁判官を含む、全員一致によって下された。

【憲法参照条文】

21条(集会・結社・表現の自由、通信の秘密)

@集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

A検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

【民事訴訟法】

19713         

次に掲げる場合には、証人は、証言を拒むことができる。

1.第1911項の場合(公務員等の職務上の尋問)

2.医師、歯科医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士(外国法事務弁護士

を含む)、弁理士、弁護人、公証人、宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれら

の職にあった者が職務上知りえた事実で黙秘すべきものについて尋問を受ける場合

3.技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合